ベクトル(B)

 近々改訂される新課程では,「数C」に移行するらしいのですが,大学教養レベルの二本柱「微分積分学」と「線形代数学」のうち,後者の基本部分に当たる単元です。ベクトルとは変わった言葉ですが,英語で言う「ベクター」をドイツ語読みしているらしく,つまりは「運ぶ人」という意味です。A地点からB地点へ運ぶ,というのは矢印で表現できます。そして物理で習う「力の合成」で分かるように,実は矢印同士は,その足し算が定義できます。足し算が出来たら,引き算も出来ます。
 そうすることで何がウレシイのか,というと,ベクトルとは高校数学における「第3の幾何学」であり,一言で言えば「計算だけで図形の問題が解ける」メリットがあります。つまりは図形の問題を「ベクトル語に翻訳して」「ベクトルの世界で計算して」「得た答えを逆翻訳して」答えを得る,すなわち,「計算への迂回」が,ベクトルを取り入れる高校段階におけるメリットだと言えましょう。さらにはある意味での掛け算までうまく定義すれば,使える範囲が「角度」や「長さ」「面積」へとすごく広がります。言っていれば初等幾何は「黒電話」,座標幾何が「ガラケー」,そしてベクトルは「スマホ」ぐらいの差があるように個人的には感じます。
 だから,ベクトルを使いこなすには,スマホとガラケーでメールの打ち方が違ったように,新しいベクトルでの計算ルールをまず覚えます。また,内分点とか,平行とかいった日本語での条件を「ベクトル語」に翻訳することも覚えましょう。メンドウかもしれませんが,いったん覚えてしまうと,「こりゃ便利だわい」と思える瞬間がきっとくるはずです。
 最大のポイントは,「基底ベクトルを取って,1次独立性を使って係数を比較する」解法でして,これが分かると,まあ平面ベクトルの半分は分かったと思っても言い過ぎではありません。

 次の空間ベクトルは,これもベクトルを学ぶメリットなのですが,空間に拡張しても,新しく覚えることがあまりない,という楽しい事実があります。
 そういうことで,ベクトルとは「図形を調べるスグレモノツール」と思って下さい。
 苦手な人も多いのですが,ポイントを押さえれば,数列よりは底は浅いので,ぜひマスターして,「こりゃ便利だわい」と実感してみて下さい。

ではまた次回。

Nasuno Kumao

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