場合の数と確率(A)
確率は大学入試では理系向けの微分積分に次いで,2番目に多く出題されると言われていますから,重要です。まあ,問題を作りやすいのでしょう。
ここの単元では,難しい方程式とかは出てきませんが,代わりに,公式に頼ることから離れることが大事になります。中学数学のノリでいきなり「ん?どの公式を使う?」と考えるのではなく,白紙の目で見て,どういう視点から見れば数えやすいのか,ということを1つ1つ丁寧に押さえることがとても大切です。いろんな考え方が出てきますけども,ここは割と「身近な例」が作りやすく,想像もしやすいですから,必ず自分で具体例を作って理解するようにしましょう。
<2021年12月5日追記>「数える視点」を理解して覚えるのが大事,と書きました。具体的に述べておきましょう。以下の問題を3分ほど考えてみて下さい。(解答は末尾に掲載)
問。7冊の異なる本から1冊以上持ち出したい。持ち出し方は何通りあるか。
<2021年11月29日追記>ここを訪ねて来る方が多いので,追加で情報を。この単元で良い本は,細野真宏さんの確率の本です。クマの表紙の本です。彼自身が頭が良い人なのだろうな,と思いますが,かなり参考になります。白紙で最初から考えていくためには,この本で数週間ほど集中的に場合の数と確率をやり込んでしまうのが有効でしょう。<追記終わり>
非常に頭を使う単元で,文系の方でもここだけはできた,という人が多いところです。逆に言うと,「メンドクサガリ」や「アワテンボウ」にはツライ単元です。中学受験とかで,変に暗算で「シャッ」と解くのがカッコイイとか思っていると,ここでは躓いてしまいますよ。手を使って,丁寧に考えることです。ついでに言っておくと,意外に大事なのが,原始的ではあるけども,「樹形図」がとても役に立つことは知っておきましょう。詰まったら「おーい,樹形図!」ということですね。なお,私自身は,この単元では模範解答の通りに考えるのは,実は苦手で,答えは合わせるために確認しますが,自分なりの解答を書くように心がけています。他の微積分とかだと,だいたい模範解答に近い解答が書けることが多いのですけれども,確率などは,自分なりに書き直した方が納得がいくことが多いですね。そういう意味でも「自分の頭でよく考える」ことが必要かな,と思います。
まとめると,(1)イキナリ公式に頼るな,(2)特に場合の数では,どの視点から考えたら数えやすいのか,問題演習を通して,一つひとつ丁寧に理解して覚えること。(3) 基本的な考え方がなぜ存在しているのか,その理由も理解しつつ,その考え方になじむこと。排反,独立,余事象,反復試行など。(4)「トピックス」つまり有名な話に慣れておくこと。「2つのサイコロ」は「6×6の表を書く」,「くじ引きで当たる確率は引く順番によらない」,「2人か3人のジャンケンの確率はキレイ」などですかね。
<2021年12月5日追記続き> さて,答えですが,この問題は「組み合わせ」で出てきます。異なるn個からk個取る組み合わせを,ここでは n_C_k と書くことにしますね。初めてだと,「えーと,1冊だけなら 7通り,2冊だと 7_C_2=(7×6)÷(2×1)=21通り,3冊だと…」と,n_C_k を 5~6回繰り返し計算することになりまして,結構面倒ですね。これは「取る側の視点」ですが,今回はこちらは面倒なんです。では,どうしたらラクに数えられるのか,ということですが,これは「取られる側の視点」に立つと,アッサリ解決します。本1冊1冊がまるで人格を持っているように考えて下さい。それで各本について,「ボクは持ち出されるのかな?置いてけぼりかな?」の2通りだと考えますと,各本について「出す・出さない」の2通りの選択肢があります。これが 7冊ありますので,「出す・出さない」を7回繰り返して選択します。したがって,2^7=128 (^ は累乗)通りあり,そのうち,「0冊持ち出す」場合を除いて,結局,128-1=127 (通り)…(答)となります。いかがですか?視点が大事っていうのが,よく分かる具体例だと思いませんか? <追記続き終わり>
ではまた次回。
Nasuno Kumao